ディヤルバクルの自慢はこの城壁。
万里の長城に次ぐ世界二位の長さを誇る。
ということは、ひとつの町をすっぽり囲む城壁としては
実質世界一位といっていいだろう。
地図上の矢印で示したのがダーカプと呼ばれる
旧市街のシンボル的な門。
ここにあるツーリストインフォに寄ったら
立派な日本語のガイドブックをいただいた。
ダーカプの上からディヤルバクルの旧市街を眺める。
さ〜ってと、インフォで教えてもらった見どころを巡ろうか。
と歩きはじめてものの10分も立たないうちに
小学校の図書館勤務(司書?)という男性に声を掛けられた。
じつは、ここディヤルバクルはクルドの首都とも呼ばれる街。
クルドの文化を知りたくはないか?という彼。
もちろん!と答えると先頭きって街中を案内してくれた。
地図上の赤丸の部分が最初に城壁が築かれた旧・旧市街部分。
その城壁の上に登って唖然。
ほんの数百メートルしか離れていない
さっきのダーカプからの眺めと雰囲気がまったく違う。
さらにいうと、ダーカプから数百メートルには
近代的なおしゃれなマンションも建っている。。。
旧・旧市街の一部は半ばゴミ捨て場と化している。
そしてその隣りで暮らす人々。
旧市街(大きい城壁に囲われた部分)は?と見れば
放し飼いの羊の姿。
城壁そのものを住居にしている人々も。
違法だけれども貧しい人々はこうして住み着いてしまうんだそう。
ゆくゆくは城壁周辺はすべて整理される予定というが・・・
城壁の外(↑写真右手)にはティグリス川が流れる大地。
迷路のような旧市街。
路地のど真ん中に突如、鮮血が溜まっていた。
傍らには鶏の足が数本。ここで裁いたのか・・・
目を上げると隣りには締められたばかりの鶏を乗せた台車。
まさに命を肌で感じるような
生き生きとした暮らしぶり、といいたいところだが
まるで廃墟のような家々も少なくない。
そんな景色に足を止めさせたくないがゆえなのか…
先導する彼が足早すぎて、私達は着いて歩くのがやっと。
辿り着いた先はデンベジ・ハウス。
デンベジとは、クルドの口承文学とそれらの語り部、民俗詩人のこと。
クルドの伝統や歴史はデンベジによって代々語り継がれてきたという。
日本の民謡にも似た独特の節回しで、語りかけるように謳う。
一人が謳い終わるとまた一人・・・誰ともなく謳いはじめる。
お次はクルド文化センターのような場所。
ここでは若い世代にクルドの伝統を引き継いでいるという。
大きなタンバリンのような楽器はアルバーネというらしい。
和太鼓を思わせるような力強い音が出る。
たった六人の少女が奏でているとは思えない迫力だ。
さらに彼女たちの歌声に吸い込まれる。
腹の奥・・・というよりも
まるで大地の底から響くかのごとく深く
それでいて心が洗われるような透明感をもつ。
身体全体でリズムを取りながら
楽しそうに気持ち良さそうに歌い奏でている。
こうしてクルドの熱い血は脈々と生き続けてきたのか…
そんな感動から一転。。。
オレもオレも〜と飛び入り参加した誰かさん。
ひたすら練習の邪魔してただけ💦
気付けばもう日暮れ間近。
ウル・ジャーミィと旧市街をささっと観光。
1600年代から続く名物カフェの前は工房通り。
下町風情の界隈はやっぱりいいね♪
夕方から演奏会があるというので
大急ぎで食事を済ませ、再び文化センターへ。
サズがメインで、時折ギターや太鼓も交えつつ。
お決まりの曲になるとクルドのダンスがはじまる。
小指と小指をつないでフォークダンスのようなステップ。
この踊り、ウルファで逢ったアジズさんも踊ってたー!
みんなで輪になって踊ると不思議な一体感が生まれる(^_^)
このあと、奏者の一人が私達の傍らへきて
片言の英語で懸命にクルドについて語ってくれた。
昼間の彼もまた、そうだった。
クルド人についてどう思う?
PKK(※)はテロリストだと思う?
投げかけられる質問に彼らの切望が聞こえる。
クルドのことを知ってほしい。
クルドへの偏見を払拭したい。
そんな彼らも、初対面のトルコ人とこうした会話をすることは
おそらくないだろう。
これは私達が第三国の人間だからこそなせることなのかもしれない。
だれもいない廃墟(遺跡)を見て歩くのが楽しいかい?
生きている人間と接するほうがより楽しいと思わないかい?
昼間の彼の言葉が響く。。。
※PKK(クルディスタン労働者党)
Wikipediaによると
現在アメリカやEU等によりテロ組織認定をされており
クルド民族のトルコからの独立を求めるとされている。
ただし、それはクルドの外の世界の認識。
なぜ彼らはその手段を選ぶのか、彼らにしかみえない世界もある…